コーヒーで旅する日本/四国編|エスプレッソとネルドリップの二刀流で、宇和島に新たなコーヒーカルチャーを発信。「宿と珈琲 太陽と月」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。4つの県が独自のカラーを競う四国は、県ごとの喫茶文化にも個性を発揮。気鋭のロースターやバリスタが、各地で新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな四国で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが推す店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

「宿と珈琲 太陽と月」


四国編の第45回は、愛媛県宇和島市の「宿と珈琲 太陽と月」。町のシンボル、宇和島城周辺に広がる市街から少し離れた静かな住宅地に、5年前にオープンした「太陽と月」は、宇和島初のコーヒースタンドとして注目を集めている。店主の兵頭さんは、ニュージーランドで現地のコーヒーカルチャーに触れ、バリスタも経験。エスプレッソ主体の本場のカフェメニューも魅力の一つだ。さらに開店後は、自家焙煎にネルドリップとコーヒーの提案の幅を広げている兵頭さん。地元に新たなコーヒー体験を広める機会を作るべく、日々提供する1杯のクオリティに磨きをかけている。

店主の兵頭さん


Profile|兵頭康平 (ひょうどう・こうへい)
1995年(平成7年)、愛媛県宇和島市生まれ。大学卒業後、県内の銀行に就職、貿易関連の仕事を探すため退職しニュージーランドへ、偶然出会った人に誘われて現地でカフェ運営、バリスタの経験を積むも、コロナ禍により約半年で帰国。家業のカフェ・ポラリスをサポートしながら、2021年に宇和島初のコーヒースタンド&ゲストハウス、「宿と珈琲 太陽と月」をオープン。3年前から自家焙煎を始め、豆の販売にも力を入れている。

コーヒーとの縁の始まりはニュージーランドから

店はカフェ・ポラリスと同じ敷地内で隣り合う

城下町、港町として栄え、愛媛県南部の中心をなす宇和島市。南国の穏やかな気候と、ゆったりとした街並みは、どこか大らかな空気が満ちている。「地元の方は喫茶店になじんだ人が多く、テイクアウト主体の店は使い方に迷う人も中にはいらっしゃいます。それでも、今までにないスタイルを広め、変えてみようと、新たな試みにチャレンジしました」とは、店主の兵頭さん。祖母と母が手掛けるカフェ・ポラリスが同じ敷地内で隣り合い、ランチタイムが近づくと、どこからともなく多くの地元客が集まってくる。また、コーヒースタンドに併設して、ゲストハウスも同じ建物内で営業。「今はネット予約のシステムを準備中。実はゲストハウスも祖母の夢の一つだったんです」。兵頭さんのチャレンジングな気質は祖母譲りかもしれない。現在は、イートインが主体のポラリス、テイクアウトとコーヒー豆の販売の「太陽と月」と、それぞれ個性を発揮している。

エスプレッソの抽出はハンドプレス式マシンを使用


「太陽と月」に先駆けて、カフェ・ポラリスが開店したのは2018年。兵頭さんが大学を卒業するタイミングだった。「もともと、祖母が惣菜店を営んでいて、いつかはカフェをやってみたいという夢を実現したもの。母も料理好きで、今ではランチが評判になっています」。今では、ほぼ予約で満席になるほどの盛況ぶりだ。ただ、自身は市外に就職したため、当初、カフェにはほとんど関わっていなかったという。むしろ転機となったのは、就職から1年後に渡ったニュージーランドでの経験だ。

「偶然出会った方が、カフェ経営をされる以前に現地の貿易関連の会社に勤められていたという話を聞き、意気投合し、お誘いを受けたため、家業のカフェにもつながるような仕事ができればと思い、コーヒーの道を選びました」と兵頭さん。個人経営のカフェが地域に根付いたオーストラリアと同じく、ニュージーランドも独自のカフェ文化を持つお国柄。現地のコーヒーカルチャーを吸収しつつ、新たな仕事に邁進した。「ここでは、日本ならではのドリップコーヒーを広めようと力を入れていました。現地ではエスプレッソが主流で、ドリップはほぼゼロに近い状況でしたが、徐々に浸透していきました」

エスプレッソダブルにスチームドミルクを合わせた、フラットホワイト550円は、兵頭さんがニュージーランド滞在時に出合ったオセアニアの定番ラテ


先輩ロースターに刺激を受け独自の味を追求

2年前から提供を始めたネルドリップは、現在も日々研究を欠かさない

しかし、ニュージーランドに移って半年ほど経つころ、折り悪くコロナ禍に見舞われ、やむを得ず帰国することに。「まだ、このときは独立して店を始めるまでは考えてなくて、再度、ニュージーランドに戻る機会をうかがっていました」と兵頭さん。ただ、そのチャンスはなかなか訪れず、時間が過ぎるばかり。その間、家業のカフェ・ポラリスを手伝っているうちに、同じ敷地内で親戚が住んでいた建物が空くことに。「先が見えない中で、建物を使っていいよ、と言われたのがきっかけで、思い切って開店へと舵を切ったんです」と振り返る。

もともとコーヒーは好きだったが、開店にあたり、自分で焙煎することは考えていなかったという兵頭さん。当初、豆を仕入れていたのは、前回紹介した伊予市の手焼珈琲RODANから。そもそもはポラリスで豆を使っていたことから、RODANの店主・西口さんとの縁を得る。「最初は、RODANの豆を使ってエスプレッソを出したかったんです。西口さん曰く、RODANの豆を使ってエスプレッソを出しているところが松山のバーしかないとのことだったので、うちでやろうと。ただ、店を続けていると、自分でもコーヒーの味作りをしたくなって」と兵頭さん。ニュージーランドでも焙煎の経験はあったが、現地で使っていたのは、フルオートのオンデマンド焙煎機。自分の手で豆を焼くという経験はなかった。

ネルならではのトロっとした質感を残しつつ、すっきりした後味に仕上げた、ハンドドリップコーヒー600円


そこで、西口さんに教えを請うたが、「上達のための方法は教えてくれましたが、焙煎室は見せてくれなくて(笑)。でも、それが逆によかったかもしれない。むしろ自分でやってやろうという気持ちになっていきました」と、3年前に手回し焙煎機を導入。独学で試行錯誤に取り組んでいる。「当初は豆のオイルが浮くくらいの深煎りにしていましたが、毎回少しずつプロセスを変えて、今は中深煎りくらいのレンジに落ち着いています」と兵頭さん。現在はエスプレッソ用のブレンド一本だが、ドリップ用のブレンドも鋭意開発中だ。

週替わりで、カフェ・ポラリスの焼菓子も販売


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